結論をいうと斬新なコンセプトのとてもいい本だと思う。対象読者は書名のとおり、これから独学でプログラマーをめざす人であろう。文系出身の人も含めてプログラミングの仕事に興味があるのだがどこから勉強を始めればいいかわからないという人にはお薦めである。そして自分の周りをみていると、最近そういう人は増えているように見える。
著者は大学で政治学を学んだアメリカ人であり、彼自身独学でプログラミングを学んでいて、そのノウハウが詰まっている。
序文にも書いてあるが、この本はPythonの解説をするがPythonを身につけることを主眼にしたものではない。最初に学ぶ言語はなんだっていいのだが、実際に言語の学習の部分を抽象化したまま話をすすめることはできないのでPythonを選択したというスタンスであろう。
Pythonの説明はある程度網羅的であり、これであるレベルまでは十分学習可能だとは思うが、一般的なPythonの入門書と比べるとページ数も少なく不親切な部分もあるかと思う。しかし目的が違うのだからそこは比べてもしょうがない。この本がよいのはそれ以降のところである。Bashの使い方、データ構造、アルゴリズム、バージョン管理、エンジニアとしてのマインドセットのあり方、などの部分だと思う。特にこの章立ての順序が絶妙である。まずはつべこべいわずコードを書け、ツールを使え、マインドセットだの言い出すのはそれからだ、という気持ちが感じられる。
最後は仕事の探し方と学び続ける方法という、エンジニアとしては一番大事なことで締めくくられる。とても意識の高い締めくくり方をするのだが、まずはコードを書け!で始まってるお陰で意識の高さが上滑りしているような印象を受けないのがよい。
最後に、仕事の選び方については、この本はアメリカでの求職が前提で、日本では事情が違う部分もあるので注意が必要である。独学でプログラミングを学んだ直後だと実績がないのでそんなに良い条件はないだろうというのは日米共通だとは思うが、日本の場合とくに技術軽視かつ長時間労働という会社を選んでしまうと今後のステップアップがなかなかできないので気をつける必要がある。